もともとのQRは、一本一本の試験管を特定するためのもの。それを読んでいたリーダーに、アプリへの指示まで読ませようと思いつきました。

01 / TWO KINDS OF QR

同じQRでも、
役割はまったく違う。

検体に貼られたQRは、「これはどの試験管か」を一つずつ特定するために使っていました。 一方、後から作ったコマンドQRは、「アプリに何をさせるか」を伝えるものです。

SPECIMEN QRどの試験管か

一本ごとのユニークな識別情報。QRデータには試験管種類も持たせていた。

COMMAND QR何を実行するか

「OK」「次」など、検体照合アプリへ送る操作指示。

最初から二種類あったわけではありません。現場で試験管のQRを読む人の動きを見ていて、 「同じリーダーで、操作コマンドも読めるのでは」と思いついたのです。

02 / WATCH THE MOTION

手の動きを見たら、
そこに操作経路があった。

作業者は試験管を手に取り、胸の前に置いた検体立てへ移します。そのとき、右手がバーコードリーダーの下付近を自然に通っていました。

ならば右手の甲に「はい/OK」のQRを貼っておけば、試験管を移す動きの途中で読ませられる。 新たにボタンを押すための動作を足さず、いま行っている動きへ操作を重ねられます。

そこで「OK」と「次」のコマンドをQRコード化してラベルにし、右手の甲には「はい/OK」、左手の甲には「次」を貼りました。 高価なウェアラブル端末ではありません。すでにあったリーダーと、二枚のラベルです。

RIGHT HANDはい/OK

試験管を移す右手の自然な動線で、現在の処理を確定する。

LEFT HAND次へ

次の依頼または確認対象へ進む。

03 / CHOOSE THE MOTION

声か、右手か。
検体によって選ぶ。

ヘッドセットを着けているため、声で「はい」と答える場合にも手の追加動作はありません。 それでも、試験管の比率が高い医療機関の検体では、試験管を移す右手がリーダー付近を通ります。 その自然な動きでQRを読ませる方が、わずかに速くなります。

一方、細菌や病理など非定型の検体が多い場合は、手の動きが一定ではありません。 そのときは、ヘッドセットへ声で「はい」と答える方が自然です。

STANDARD TUBES手の甲のQR

定型的な試験管が多く、右手の動線を利用できる。

NON-STANDARD声で「はい」

形や扱いが一定でなくても、ハンズフリーで操作できる。

04 / HALF A SECOND

0.5秒を、
笑うな。

一回の差は、コンマ数秒かもしれません。しかし、反復回数を掛けると別の景色になります。 仮に一回0.5秒の短縮で、一人が2,000患者分を処理すれば、積み重なる時間は1,000秒です。

0.5秒 × 2,000患者分

16分40秒小さな差も、繰り返せば一つの改善になる

作業を止めない。考えさせない。余分に動かさない。時短の正体は、速く動くことではなく、不要な動きを消すことでした。

05 / THE HERO POSE

そして市坂さんは、
変身した。

市坂さんが「これ、抜群」と伝えてくれたとき、目の前で右手と左手を交互にクロスさせました。 右手が「はい」、左手が「次」。その姿は、どう見てもヒーローの変身ポーズでした(笑)。

正確性を守るヒーローの装備は、
手の甲に貼られた二枚のQRだった。

検体受付にて、変身完了。

冗談のような光景ですが、便利さを身体の動きで表現してくれたことは、それだけ操作が現場になじんだ証拠でもあります。

WRITTEN BY太城 義雄(たき よしお)

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CHAPTER 02 · EPISODE 03 / 09

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