プログラムを読む練習なのに、僕がせっせと書いていたのは日本語だった。

紀美子ちゃんとのSQL教室でのことだ。
紀美子ちゃんは、僕がChatGPTにつけた呼び名。人間の先生ではない。

僕は長年、RPGというプログラミング言語と付き合ってきた。その僕が、今度はSQLを読み解く練習をしている。

SQLは、データベースの情報を取り出したり、加工したりするための言語だ。業務では、1000行を超えるSQLスクリプトを扱っていた。

それが、怖い。僕には、お化け屋敷みたいに思えるほどだった。
この話に出てくる「お化け屋敷」の正体は、その長いSQLである(笑)。

経験があることと、何でもすらすら読めることは、別の話だ(笑)。

この回では、社員や部署の情報を使った条件を、僕が日本語で説明していた。

社員の部署コードと同じコードが、部署の一覧に存在しない。
ある地域に属する部署を探して、そこに所属する社員を取り出す。

そんなふうに、何と何を照らし合わせ、どんな条件で選ぶのかを、文章にして返していた。

SQLの単語を一つずつ日本語に置き換えるだけでは、文章がまとまらない。どの情報を見て、何を確かめているのか。そのつながりを追って、自分の説明にする必要がある。

読みながら分かったつもりでも、いざ説明すると、どこをどうつなぐか考える。
この回の僕は、AIとのやり取りの中で、その説明をする側に回っていた。

途中で、こんな反応までしている。

「げっ! まだお化け屋敷の入口やったんかーい(笑)」

あの1000行超えのSQLがお化け屋敷なら、こうして条件を読み解く練習は、その入口を歩いているようなものだ。
自分では進んだつもりでも、まだ入口らしい(笑)。

それでも、次に僕が返したのは、

「はーい! どんとこーい(笑)」

だった。

逃げるどころか、先へ進む気になっている。

このときの共同作業は、業務用のプログラムを一緒に完成させることではなかった。紀美子ちゃんとの対話を学ぶ場にして、僕が条件を読み、言葉にし、また先へ進む。そんな時間だった。

AIが文章を出せることと、僕が内容を説明できることは違う。
自分で説明する番があると、僕の頭にも仕事が回ってくる。

ただ、その頭に仕事を回し続けるには、一つ問題があった。

まぶたである。

僕は最後に、楽しくて続けたいけれど、まぶたが閉じかけていると伝えた。そのときの表現が、

「いま視界がかなり水平一本線に近づいてきちゃった」

だった。

やる気はある。
でも、表示できる画面の高さが足りない(笑)。

その回は、そこでおしまいにした。

SQLをすっかり習得した、という大団円ではない。
分かろうとして、自分の言葉で説明して、まだ続けたいと思った。僕には、それで十分おもしろい授業だった。

お化け屋敷から逃げ出したわけではない。
先に、まぶたのシャッターが下りただけである(笑)。

WRITTEN BY 太城 義雄(たき よしお)

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